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「翻訳文法技能試験〈英語部門〉」の受験対策講座



「翻訳文法技能試験」受験対策講座 第1回~「翻訳文法技能試験」はどんな試験?


◆「翻訳文法技能試験」はどんな試験?

「翻訳文法技能試験」の受験対策講座を開始しますとお知らせしても、それが一体どんな
試験で、何がメリットなのかをまず、知っていただく必要があります。
サイト上に解説はあるのですが、ここでは対策講座開講にあたり、極めて実践的というか、
実際的なお話いたします。
 

◆「翻訳文法技能試験」は、あなたの翻訳の概念を変えます。「直訳思考」をストップさせよう!

翻訳と言えば、脇に英和辞典を置き、英文を読んでいく、わからない単語があれば、その辞書を引き、一文一文訳していく、というのがほとんどの方の翻訳作業のイメージだと思います。

「わからないことは何でも辞書にある」というのは「直訳思考」の発想です。わたくしたちは、まずこの「直訳思考」を真っ向から否定します。

至って簡単な例から始めましょう。

She is a good pianist.

さあ、あなたはどう訳しますか?まず、まったく辞書は必要ないですね。
「彼女は素晴らしいピアニストだ」と訳しますか?
これは「彼女はピアノがうまい」の意味ですよね。

ですから

Conan Doyle was an expert boxer and billiard player.

を見て、かの名探偵シャーロックホームズの生みの親であるコナン・ドイルが、プロ
のボクサーだったとか、腕の良いハスラーなどと訳しては誤訳ですよね。

「コナン・ドイルはボクシングもビリヤードの腕も大したものだった」と訳します。
余談ですが、彼は学生時代、ボクシングの選手であったことは事実です。
 
◆英日の裏返しは日英だ~別々の勉強でなく裏返そう

今度は逆に「彼は泳ぎがうまい」を英文にしましょう。日本人の感覚からすれば、
He swims very well.
.などとしたいところですが、やはりHe is a good swimmer.とした方が、よりポピュラーな英
文となります。
 

◆翻訳は、まず英文の型を目で把握せよ。
それでは次の英文の共通点は、なんでしょう。 

    ①His father’s death compelled him to give up school.
    ②A year in America will cost you much money.
    ③Quick treatment would save his life.
    ④The noise in the street kept him awake all night.
    
⑤A little care would have prevented him from injuring himself.

お分かりでない?それでは最後の英文は、
A few minutes’ walk brought me to the station.
これをご覧になっていかがでしょう?そうです。みんな「無生物主語の構文」ですよね。

それがわかれば、訳し方の基本は、
①この「無生物主語」を副詞句か節として訳し、
②間接目的語を主語として訳せば、よいということがわかります。

そうすれば「2,3分の歩行が、わたくしを駅に連れて行ったなど」などと直訳しなくなります。
簡単な英文ですから、すぐ気づき直訳はしないでしょう。でも「無生物主語」の複雑な英文で
すと、熟練の翻訳者でも「2,3分の歩行が…」と訳してしまうことがあるのです。

 ◆
瞬時に、英文の型を見抜いて翻訳する技術、わかりやすい訳文を書く技術を審査するの
  が、「翻訳文法技能試験」です。


かってのように1冊の本を訳すのに何か月もかかっていたのなら、あの「ハリーポッター」は、
日本ではベストセラーにならなかったかもしれません。本国でベストセラーを続けている中
で刊行されたので、「じゃ私も」と購入した人がたくさんいたからです。

ビジネス翻訳の世界では当然ですが、出版翻訳の世界でも、翻訳にとって「速さ」は、「正
確さ」とともに今や必須の条件です。

その基本は、英日翻訳なら、感覚的に英文の意味を把握すること、それと同時にわかりや
すい日本語に置き換える能力です。先ほどの「無生物主語の構文」でお分かりですね。

瞬時に英文の形を見抜き、すかさずわかりやすい訳文にできる能力を査定するのが、この
「翻訳文法技能試験」なのです。

次回は、どうやってこの能力を審査するのか「翻訳文法技能試験」の内容をお話しします。
 

◆第1回目の宿題です。

上にある5つの「無生物主語」の英文を翻訳してください。模範訳例は次回発表します。
ヒント:A few minutes’ walk brought me to the station.→2,3分歩くと駅に着いた。
 


第2回~「翻訳文法技能試験」はどんな試験?その2

◆それは宿題から始めましょう。
宿題は、以下の「無生物主語の英文」を訳すでした。それぞれ「直訳型」と「翻訳英文法型」で
訳してみましょう。

①His father’s death compelled him to give up school.
「直訳型」彼の父の死は、彼が学校をやめるのを強いた。
「翻訳英文法型」父が急死したので、彼は学校をやめなければならなかった。

②A year in America will cost you much money.
「直訳型」アメリカでの1年は、あなたにたくさんのお金を費やさせるでしょう。
「翻訳英文法型」アメリカに1年いると、大変なお金がかかる(金がいくらあっても足りない)」

③Quick treatment would save his life.
「直訳型」急ぎの治療が彼の命を救ったでしょう。
「翻訳英文法型」急いで治療してやれば、彼の命は助かるだろう。

④The noise in the street kept him awake all night.
「直訳型」通りの騒音が彼を一晩中起こしていた。
「翻訳英文法型」通りがやかましくて、彼は一晩中眠れなかった。

⑤A little care would have prevented him from injuring himself.
「直訳型」少しの気遣いが彼を怪我から守った。
「翻訳英文法型」ちょっと気を付けていれば、彼は怪我などしなかったはずだ。
 
「直訳型」は、苦し紛れに訳しているのがわかりますね。ちょっとご自分の訳を見てください。この「直訳型」に近い訳をしていませんか。
詳細は後日、「無生物主語の構文」のところで解説します。

「無生物主語の構文」のわかりやすい日本語への訳し方の基本は、「主語の名詞句を副詞節に読み替え、次に、原文では目的語のになっている人間を主語に置き換え、その人間の立場から状況をとらえ直す」ことです。
このことが理解できていれば「無生物主語の構文」一度直訳してから訳すのでなくストレートにわかりやすい日本語に置き換えること
ができるようになるわけです。

あとは、「一瞬にして無生物主語の構文」を見分ける眼力をつけることです。瞬間的に、感覚的にその見分けができて自然に口か
ら「わかりやすい日本語」の訳が出てくるようになる力を審査するのが、「翻訳文法技能試験」です。

◆日英は、英日の裏返し
前回もお話ししましたが上の訳文を見てください。
「父が急死したので、彼は学校をやめなければならなかった。」

◆あなたはこれを英文に訳すことができますか?
少なくても「無生物主語の構文」を知らなければ、大変な苦労をします。そして重要なことは、この日本語を見て英語に置き換えるに
は、この訳文が「無生物主語の英文」を必要としていることを見抜く感覚が重要ということです。

◆「父が急死したので、彼は学校をやめなければならなかった。」を見て、His father’s death compelled him to give up school.の英文が即座に頭をよぎるようになることがこの試験が求めていることなのです。、
 
 
◆「翻訳文法技能試験」の内容

出題方法は以下の通りです。

(1)200問の問題は、すべて4肢択一試験です。
(2)英日問題が、120問、日英問題が40問、英文書換えが40問の計200問です。
(3)時間は90分。いかに択一問題とはいえ、1問27秒ですから厳しいです。
(4)試験は、インターネット受験です。したがってPCがあれば、家庭でも受験できます

まさに瞬間的に、感覚的に対処する必要があるわけで、この見分ける訓練こそが、この試験の基本的なポイントとなります。
したがって、この試験は一見しての判断が重要です。
過去問と似た問題が出てくるかもしれませんが、とにかく瞬時に見分け、適切な訳をほとばしらせることが重要なのです。

◆そのためには、瞬時に日本語の訳文が、または英文が出てくるまで訓練し、どのような英文が出てきても、速く正確にそして「わかりやすい日本語」で訳せるようになるのがこの試験の目的です。日英の場合は全くの裏返しです。

◆それでは、どのように出題されているのか、試験のページの画像をご覧にいれます。



英日の問題、3問です。インターネット上でこの画面を見て、適切と思われる訳文の先頭の「ラジオボタン」をクリックします。ですから
説明しましたように、英文を見て瞬間的に文体を判断する必要があります。
◆どうして判断できるようになるか?それが重要です。「翻訳英文法ルール」があります。
それがこの対策講座のバックボーンなのです。

◆それでは、今回の宿題です。

次の日本語の訳文は、どんな英文を訳したものかを考え、その構文で英文に書き換えてください。ヒントは、使用する動詞の原形を示
してあります。まずは辞書にあたってみましょう)

   ①2,3分歩くと、駅に着いた。(ヒント:bring)
   ②調べてみると、新しい事実が出てきた。(ヒント:reveal)
   ③犬が吠えたので、泥棒はあわてて逃げだした。(ヒント:frighten)
   ④病気だったので、彼はパーティに出られなかった。(ヒント:prevent)
   ⑤彼女は痩せているので、背が高く見える。(ヒント:make)



「翻訳文法技能試験」受験対策講座 第3回~「無生物主語の構文」その1

それでは宿題から始めましょう。
次の日本語の訳文は、どんな英文を訳したものかを考え、その構文で英文に書き換えてください。(ヒントは、使用する動詞の原形を示
してあります。まずは辞書にあたってみましょう)

   ①2,3分歩くと、駅に着いた。(ヒント:bring)
   ②調べてみると、新しい事実が出てきた。(ヒント:reveal)
   ③犬が吠えたので、泥棒はあわてて逃げだした。(ヒント:frighten)
   ④病気だったので、彼はパーティに出られなかった。(ヒント:prevent)
   ⑤彼女は痩せているので、背が高く見える。(ヒント:make)
 
あなたの辞書には、ズバリの、または類似の例文が載っていましたか?載っていればなかなかの辞書と言ってよいかもしれません。
「どんな英文を訳したものかを考え」については、気が付きました?これに気づけば、今度はあなたがなかなかの勉強家と言えます。
 
そうですね。「全部、無生物主語の構文」です。したがって、英文の主語は、

  • 2,3分歩くと

  • 調べてみると

  • 犬が吠えたので

  • 病気だったので

  • 彼女は痩せているので

のいずれも副詞句が主語となります。
模範訳例です。

  • A few minutes’ walk brought me to the station.

  • Our inquiry revealed a new fact.

  • The barking of the dog frightened the burglar away.

  • Illness prevented him from coming to the party.

  • Her slimness makes her look tall.

いかがでしたか?「構文に気が付けば」意外なほど英文がすらすら書けると実感されたのではないでしょうか?
Our inquiryのourはもちろん所有格ですが主格として訳すというルールは後日お伝えしますが、この表現の感覚をぜひ身に着けてく
ださい。Her slimnessも同じような感じです。
 
◆今回も無生物主語の構文の続きです。
4つの技法を覚えてください。今回はそのうちの2つです。

①まずは大原則です。
「(1)主語の名詞句を副詞節(句)に読み替え、
(2)次に、原文では目的語になっている人間を主語に置き換え、
(3)その人間の立場から状況をとらえ直す」でしたね。

The noise in the street kept him awake all night.

  1. The noise in the street→「原因」と考え訳します⇒通りがやかましかったので

  2. (3)him awake all night.→主語に置き換えその人の立場から訳す⇒彼は一晩中起きていた⇔眠れなかった。

<訳例>「通りがやかましくて、彼は一晩中眠れなかった」
 
②無生物主語の名詞に動詞の観念が含まれている場合
His father’s sudden death compelled him to give up school.

  1. deathに、動詞の観念、つまりこの場合は、dieを見ます→His father died suddenly.

  2. これを副詞節と考えると→同じく「原因」と考え→As his father died suddenly,と副詞節ができます⇒彼の父が急に死
    んだので、

(3)次に原文では目的語になっている人間を主語に置き換え、
(4)その人間の立場から状況をとらえ直す」でしたね。→He had to give up school.
   ⇒彼は学校をやめなければならなかった。
compelled⇔had toの関係を実感してください。
<訳例>「父が急死したので、彼は学校をやめなければならなかった。」
 
同じ例文が前回にも出てきました。「構文」を感覚的に覚えていただくためには、同じ文を何回も見直すのは、結構効果的な学習方法
なのです。
 
それでは宿題です。

  • People often repeat that no laws will stop criminals from getting hold of guns. Of course they are right, but
    I am not suggesting that tougher gun control will reduce organized crimes, or will inhibit crooks.

 
変形です。目的語はcriminals、organized crimes、crooks.で、これらをを新しい主語と考えます
 

  • The presence of tobacco in the blood causes blood vessels to contract, thus slowing circulation, which
    eventually leads to hardening of the arteries. And the lack of oxygen forces the heart to beat faster, and this
    in turn increases the risk of heart attack.

 
無生物主語が3つ登場します。まず動詞を確定し、目的語も確定し、ルール通り訳してみましょう。



「翻訳文法技能試験」受験対策講座 第4回~「無生物主語の構文」その2

それでは宿題から始めましょう。
宿題は「無生物主語の構文」の長文2問でした。

①People often repeat that no laws will stop criminals from getting hold of guns.
   Of course they are right, but I am not suggesting that tougher gun control will  reduce
organized crimes, or will inhibit crooks.

 
変形です。criminals、organized crimes、crooks.を新しい主語と考えます
 
<訳上のヒント>
(1)まず2つに分けましょう。

まず第1は
People often repeat that no laws will stop criminals from getting hold of guns.
 

(1) no lawsが無生物主語、このnoについては後程、学習しますが、ここでは「この名詞に
『いかなる』を付け、関係する動詞などを否定する」ように訳すと覚えておいてくださ
い。この場合はstopの否定です。
 
(2)動詞はstopで、stop A from B→「Aが、Bすることをやめさせる(押さえる)」です。
直訳しましょう。
「人々はしばしば、いかなる法律も犯罪者が銃を持つことをやめさせることができない
だろうと繰り返す。」
 
(3)無生物主語no lawsは、副詞句にするのですから、「どんな法律によっても」とか、もう
一歩突っ込んで、「どんな法律を作っても」などにしてみましょう。
 
(4) People often repeat that~の訳し方に注目しましょう。
直訳すれば上のように「人々はしばしば~を繰り返す」ですが、もちろんpeopleは特定
の人を指すのではなく、「世間の人々」のような意味ですから、「世間でよく言われるこ
とだが~(that以下)である」と訳してみましょう。

世間でよく言われることだが、どんな法律を作っても、犯罪者が銃を持たないようにす
るなどはできないことだ。
 
(2)第2文を訳してみましょう。

Of course they are right, but I am not suggesting that tougher gun control will
reduce organized crimes, or will inhibit crooks.

 

  1. tougher gun controlが無生物主語です。少し訳しにくいですが「より強硬な銃規制」というような意味です。

  1. organized crimesはそのまま「組織犯罪」、crooksは「泥棒」

  2. 上のPeople often repeat that~と同じように、I am not suggesting that~の訳に

ついて考えてみましょう。お気づきと思いますが、文の初め(議論を始めるとき)
にはこのような種類の構文がよく出てきますので、訳し方のコツを身に着けておき
ましょう。提
案すると辞書には書いていますが「私の言わんとしているのは~では
ない」などと訳したいところです

  1. 直訳してみましょう。

「もちろん、それは正しい、しかし私はより強硬な銃規制が組織暴力を減らしたり、
泥棒を抑えたりするだろうと提案しようというのではない」
 
(3)さあ、それではまとめ、そして日本語を素敵にしてみましょう。
 
<模範訳例>
世間でよく繰り返される意見として、どんな法律を作ってみても、犯罪者は銃を手に入
れるのをあきらめるものではない、という議論がある。もちろん、その通りだ。だが、
わたくしの言わんとしているのは別に、銃規制を今より強化すれば、組織犯罪が減るだ
ろうとか、泥棒が思いとどまるだろう、などということではないのである。
 
◆第2問です

The presence of tobacco in the blood causes blood vessels to contract, thus slowing
circulation, which eventually leads to hardening of the arteries. And the lack of
oxygen
forces the heart to beat faster, and this in turn increases the risk of heart
attack.

 
無生物主語が3つ登場します。まず動詞を確定し、目的語も確定し、ルール通り訳してみ
ましょう。
 
<訳上のヒント>
The presence of tobacco in the blood→血液中にタバコが入ると、たばこのニコチンなどが
入ると
blood vessels→血液の容器→血管や心臓(このように抽象的な言葉を具体的な表現に置き換
えることは、上手な訳をするための大切なコツの一つです。また、英文の意味を正確に理
解するうえでも重要です)

contract→収縮する
arteries→動脈
heart attack→心臓麻痺
 
<模範訳例>
血液中にタバコが入る
と、血管や心臓が収縮し、そのため血液の循環がおそくなり、結局
は動脈硬化につながる。それに酸素が足りなくなって、心臓は鼓動を早めなくてはならず、
そうなれば、今度は心臓麻痺の危険が大きくなってしまう。


◆それでは宿題です。今回も「無生物主語の構文」の長文です。
「翻訳文法技能試験」では長文は出ません。しかし、長文の中からいち早く「無生物主語
の構文」を見つけ出す練習は、役立ちますし、その前にもちろん「無生物主語の構文」の
訳し方のコツをマスターしてもらうことが目的です。
前回は、「無生物主語」を赤でハイライトしましたが、今回はしていません。正確に見つけ出してください。
 

①If someone provokes you so badly that you want to attack him, but because of his dominant position you are afraid to do so, you are liable to vent your anger on
someone else. This does not solve your original problem, but it does at least provide some relief for your pent-up frustrations.

 

②What all those “success” books don’t mention is that very often the same qualities that take you to the top also drop you to the bottom; the very same traits that drive you to power are the ones that seal your fare.





「翻訳文法技能試験」受験対策講座 第5回~翻訳英文法ルールを学ぶ

今回から「翻訳文法技能試験」の論理的ベースとなっている「翻訳英文法ルール」を勉強し
てまいりましょう。
翻訳英文法ルールとは、簡単に言えば日本語に訳しにくい英文の構文を文法の枠組みに
沿ってルール化したものと言えます。
したがって、このルールをマスターすることにより、訳しにくい英文が驚くほど訳せるように
なり、「わかりやすい翻訳調でないなめらかな日本語表現」ができるようになります。

そしてここからがさらに重要なのですが「わかりやすい翻訳調でないなめらかな日本語表
現」を英文にする技術が自然と身につくのです。

一例を上げましょう。
She is a good swimmer.
彼女は泳ぎがうまい。ですね。
それでは、これを英文にしましょう。a good swimmer =「形容詞+動作者の構文」を知ら
なければ、わたくしたちはShe swims very well.とでも訳したくなりますね。しかし、「形容詞
+動作者の構文」を使った方が英語として望ましいのです。
これまで英日翻訳と日英翻訳は別々に勉強してきましたが、この翻訳英文法により、表裏一
体、同時進行で学習できるのです。

ルールは32あります。それでは始めましょう。

(1) 原文の流れを乱さずに訳す。  

   これは32の翻訳英文法ルールの最も基本をなす大原則です。文章は書き手の考えを表現するものです。つまりその語順は、著者の「思考の流れ」を示すものと 言えます。この原文の流れをできるだけ乱さずに訳すことは極めて重要です。もちろん日本語と英語では文章の組み立てが根本的に異なりますが、極力この原則 を守ることが、ある意味では翻訳者の基本的なルール、つまり「原作者の思考の尊重」の具体的な表れだからです。 

Her first season passed without any suitor presenting himself.   

   suitor:求婚者、season:これは彼女の「社交シーズン」ということが想像できます。 present oneself:このpresentは動詞で、出席する、出てくるの意味です。 
   直訳流ですと、最後まで行って最初に戻ってくる訳し方「いかなる求婚者も現れることなく彼女の最初の社交シーズンは過ぎ去った」となりますが、Her first season passedまでが第1のまとまりで、それ以降は第2のまとまりと考えられますから、第2の最初に接続詞butをつけて、第1のまとまり⇒第2のまとまり と訳します。 

「彼女の初めての社交シーズンは終わったが、求婚者は現れなかった」  

   つまり書き手の言いたかったことは直訳調の訳文ですと「終わった」ことに重点が置かれていますが、「翻訳英文法ルール」に従えば、原著者は「現れなかっ た」ことに重点を置いていることがわかります。つまり、「原文の流れを乱さず訳す」ということは、このように原著者の思考を正確に伝える大切な翻訳技法で あることがわかります。  


(2)名詞の中に文を読む  

   初めに解説した前回のミニテストの⑮~⑳はこれにあたります。 
   これも(1)と同様、「翻訳英文法ルール」の基本です。ご存知のように、英語は、名詞、抽象名詞が重視されます。また翻訳にあたっては、この名詞が大変難 問となります。抽象名詞が続き、何を言っているのかわからない訳文に皆さんも遭遇したことがあるでしょう。つまり「わかりやすい日本語」に訳すテクニック の代表がこの「名詞の中に文を読む」なのです。 

Distance lends enchantment to the view.  
lend:貸す、enchantment:魅惑、view:景色 

   わずか6語なのに、大変訳しにくいですね。
   Distanceとenchantmentが曲者です。   
   直訳すると「距離は景色に魅惑を貸す」となります。 
   Distanceに「名詞の中に文を読む」のルールを活用してみましょう。 
   活用するに当たっては、あなたの想像力が重要です。「距離は景色に魅惑を貸す」という文章が何を言わんとしているかを想像することが必要だからです。「遠 くから見ると景色は魅力的になる」という意味かなと想像できれば、すでに完成です。そしてその正しい根拠が「名詞の中に文を読む」のルールと考えることが できます。
つまり Distance⇒we see a view from a distance 「私たちは遠くから景色を見る」というような文を読むことができます。 

「遠くから見れば、景色は魅力的になる」  

   つまりこの英文は、そのものの意味のほかに、「近くから見えるアラも遠くからでは気が付かない」という意味を、前後関係によっては暗に表現していることに気が付きます。
   「名詞の中に文を読む」→名詞の中に動詞的な意味が含まれる場合、前後関係から主語・目的語などを補って文章の形に読みほどき、適切な接続詞を補って訳す。  


(3)主語を表す所有格  

   所有格と言えば代名詞の所有格と、名詞につけるアポスロトロフィーsでどちらも無意識に「~の」と訳していましたが、この所有格を主語また目的語に訳すの がこのルールのポイントで、まず、(3)では所有格+名詞⇒主語+動詞と読みほどき、適切な接続詞を補って訳します。 

His failure was a surprise to us all.   

   つまりHis failureをHe failedと読み替えます。そして接続詞asを補い、as he failedのように考えます 

「彼が失敗したので、みんなびっくりした」  

   直訳調「彼の失敗がみんなにとって驚きだった」よりは確実に日本語らしいですね。  


(4)目的語を表す所有格  

   もちろん(3)と対になっているルールです。所有格+名詞⇒動詞+目的語と読みほどいて訳す。 

He hurried to his brother's rescue.   

   この文のhis brother's rescue.は、主語+動詞の関係でなく、前後関係からして「動詞+目的語」の関係にあることを読み取ります。ここでもあなたの想像力が必要です。いろ いろな視点があることを知っていれば正しい想像が次第に可能となります。ここに至るまであなたの想像力を働かせてください。 
   つまりhis brother's rescue.→rescue(動詞) his brother 彼の弟を助ける 

「彼は、弟を救助するために急いだ。」 


(5)of+名詞:主語を表す場合 

前回では名詞・代名詞の所有格が、後に続く名詞に対して主語の働きをしている場合を見てきました。たとえば
 
His speedy recovery from the illness amazed the doctors.のHisですが、「彼が病気から早く回復したことが…」のように主語として訳した方がよい場合でした。
今回は「of+名詞」の形が主語を表している場合です。実際に英文を読んでいるとこの形式はよく出てきますから積極的に活用しましょう。あなたの訳文が素晴らしいものになります。
 
Tom married without the knowledge of his parents.
 
このof his parentsをof の前のthe knowledgeの主語として訳すものです。
ただその前に、あとで出てくる「無生物主語」の訳し方のように、「名詞の中に含まれている動詞を見つけ出して、動詞として訳す」というルールを活用する必要があります。つまりこの場合は、knowledgeを動詞のknowとして訳します。そうするとhis parentsとknowの関係が明らかになり、his parents knew~と訳せることになります。the knowledgeの前には否定を示すwithoutがありますから、his parents didn't knowと考えることができます。したがって、訳文は
「トムは両親が知らないうちに結婚した。」となります。
この説明をいたしますと多くの方が「わかった!」と言ってくださいます。中には「中学や高校のときに英語をこのように教わっていたら、わたくしは英語嫌いにならなかった」などという方が結構いらっしゃいます。直訳ですと「トムは両親の知識なくして結婚した」ですから、学校ではそれに毛の生えたくらいの訳し方しか教えてくれないでしょうから、実際この英文は「何を言っているのかわからない」となります。実際、わたくしも直訳調で訳し、英文が何を言っているのか理解できず、「自信喪失⇒英語が嫌い」になりました。この翻訳英文法に偶然、出会って翻訳が好きになりました。英文の意味がよくわかり次に進めるようになったからです。
 
 
◆ 本当に英語が好きになるコツがここにあります。英文の言っていることがよくわかるようになることです。その意味でもこの「翻訳英文法ルール」をマスターすることはあなたの英語理解に大きな貢献をします。
 
 
(6)of+名詞:目的語を表す場合
 
名詞・代名詞の所有格が目的語を表す場合を見てきましたが、今回の「of+名詞が目的関係を表す」場合は大変多いので十分に活用できます。
 
His application of the rule to this case was quite natural.
 
この文のof the ruleとその前のHis applicationの関係を見てみましょう。
① Hisは、applicationの主語にあたる働きをします
② Applicationの中にapplyという動詞を見つけ出します。
③ つまりHe applied~となりますから
④ the ruleは、appliedの目的語として位置づけることに気づきます。
⑤ He applied the rule to this case.となりますね。

彼がその規則をこの場合に適用したのは、まったく自然なことだった。
となります。
 
 
(7)無生物主語の構文
 
1.まず「無生物主語」の訳し方の原則です。
主語の名詞句を副詞節に読み替え、次に、原文では目的語になっている人間を主語に置き換え、その人間の立場から状況をとらえ直し、その視点から訳す。

「無生物主語」の例文の代表といえば、

A few minutes' walk brought me to the station.

ですが、訳し方の原則に従って訳してみましょう。
①名詞句を副詞節に読み替える。このとき、重要なポイントは、「名詞句の中に文章を見る」です。つまり「2,3分の歩行」⇒「2,3分歩く」と読み替えることです。この英文では簡単でしたが、複雑になるとどう読みかえるか結構難しいですが、何度もこの「無生物主語」の文章に触れること、そして正しい想像力を働かせるようにします。
②原文で目的語になっている人間を主語に置き換えるですから、me⇒Iと読み替えます。
③そしてIの視点から訳文にするのです。
「2,3分の歩行がわたくしを駅にもたらした」→「2,3分歩くと駅に着いた」となります。
 
2.つぎに「無生物主語」の性格を3つに分類します。
(7)-1:動詞が含まれている場合
(7)-2:動詞を補ってやるべき場合
(7)-3:仮定法が含まれている場合

 
 
(7)-1:動詞が含まれている場合からやってみましょう。
 
His father's sudden death compelled him to give up school.
 
His father's sudden deathが「無生物主語」、目的語がhimです。
① His father's sudden deathを分解してみましょう。
(1) father'sは、主語を表す所有格です
(2) この主語である名詞句の中に「文章を見ます」
⇒彼の父は急死した。英文ではHis father died suddenly.とかんがえられます。
② ①で導き出したHis father died suddenly.と目的語から主語とするHeとの関係をHeの視点から見てみます。
彼は父親が急死したので学校をやめなければならなかった。
となります。
 
 
(7)-2:動詞を補ってやるべき場合
 
例を上げてみましょう。

Illness prevented him from coming to the party.

① 無生物主語Illnessには、確かに動詞の観念は含まれていません。しかし「訳し方の原則」を思い出してください。「主語の名詞句を副詞節に読み替え」るのですからやはり動詞の観念が必要となります。つまり「be動詞+ill」です。
② その主語となるのは原文の目的語のhimですから、He was ill.となり、Heの視点から見直すとBecause he was ill, he couldn't come to the party.となります。

病気だったので、彼はパーティに出られなかった。
 
 
(7)-3:仮定法が含まれている場合
 
これは無生物主語に仮定法が絡んでいる場合です。
仮 定法の構文は、「if副詞節」+「主文」が基本ですが、この「if副詞節」が、無生物主語に含まれていると考えます。したがってその時はwouldなどが ついていますので、逆に無生物主語でwouldが動詞についている場合は、この「仮定法が含まれる無生物主語」と考えることができます。
 
Quick treatment would save his life.
 
①もちろんQuick treatmentが無生物主語、wouldもありますので、「仮定法が含まれる無生物主語」つまり、無生物主語の中にif副詞節が含まれていると考えます。
Quick treatmentは「早い治療」ですから「急いで治療してやれば」のように訳すことができます。
②またwould save his lifeの方も、通常の仮定法の主文のような訳し方「彼の命は助かるだろう」となります。もちろんwouldの時制は「仮定法過去」ですから現在で訳します。

急いで治療してやれば、彼の命は助かるだろう
 
実はこの主語が仮定法を含んでいるケース、ビジネスレターなどに結構多いのです。仮定法は、丁寧語の感覚で使われますので、当然なのですが、

A prompt reply would greatly facilitate a quick decision here.

は、ビジネスレターの定型の1つと言えるような文章で、「早くご返事がいただければ、弊社の決定が大変はかどります。」と訳します。これは正式な無生物主語ではありませんが(人間の目的語がありません)、このように訳すのが、適切ですから、ぜひ活用してください。
 
 
(8) a good swimmerの型
 
形容詞+動作者(名詞)の場合の訳し方です。
その代表は、よく御存じの
 
He is a good swimmer.
 
で、「彼はよい泳ぎ手である」であるという直訳は、誤訳で、「彼は泳ぎがうまい」と訳すのが正しいのでしたね。
これを逆に日⇒英で考えてみましょう。あなたは「彼は泳ぎがうまい」という日本語を英文にするとき、如何しますか?
多くの日本人はどうしても、He swims very well.としてしましますが、He is a good swimmer.の方が、さらに英語らしい表現ということはぜひ覚えておいてください。
今回最初の例文もそうです。「両親が知らないうちに…」を英文にするにはどうします?
あの例文の構文を知らなければ、大変苦労するところですが、"without the knowledge of one's parents"を使えば簡単に英語にすることができます。
「翻訳英文法ルール」は、「日本語に訳しにくい英語の構文をわかりやすい日本語に訳すルール」なのですが、裏を返せば「英語に訳しにくい日本語の構文をわかりやすい英語に訳すためのルール」でもあるわけです。上手に活用してください。
 
 
(9)人称代名詞・指示代名詞の訳し方
 
1.人称代名詞の訳し方
 
代名詞に関する「翻訳英文法ルール」の大原則は「代名詞は切れ」です。本来日本語には、彼とか彼女などはなかったのですから、「切った」方が日本語らしくなるからです。もっともそれを表現する必要がある場合は、彼女と訳すのでなく、その代名詞が指している元の名詞、例えば彼女でなく、指している「昌子さん」に戻して訳すことを薦めています。
もちろん、契約書など主語をないがしろにしてはいけない文章では、かたぐるしい文章になってしまっても、訳すのが鉄則です。一般に戻ります。

We have a lot of rain in June.

などは、Weが、漠然と人を指す場合で、人によっては「Weの構文」などと言いますが、よく登場します。この場合は「私たちは六月にたくさんの雨を持つ」でなく「六月は雨が多い」とか「六月は雨がよく降る」と訳します。エッセイなどの翻訳書を見ているとよく「われわれは…」が出てきて意味のとりにくいことがありますが、それは原文がこの「Weの構文」で、それを直訳しているときです。この漠然と人を示す時にはTheyもよく使われます。
 
 
2.名詞の反復を避けるためのthat, one, thoseなどの訳し方
 
例文を見ましょう。
 
The climate here is just like that of England.
 
このthatはその前のthe climateを指しています。「ここの気候は、イギリスのそれとちょうど同じだ」が直訳ですが、代名詞の訳し方の原則2「元に戻す」を使えば「ここの気候は、イギリスの気候にそっくりだ」となります。元の名詞とその指示代名詞が、かけ離れている場合は、この「元に戻して訳す」が原則です。
もちろんもう一歩進んで「ここの気候はイギリスにそっくりだ」つまり「切る」方法を使うこともできます。


 
◆ これまで
    (1)原文の流れを乱さずに訳す
    (2)名詞の中に文を読む 
    (3)主語を表す所有格 
    (4)目的語を表す所有格 
    (5)of+名詞:主語を表す場合 
    (6)of+名詞:目的語を表す場合 
    (7)無生物主語の構文 
    (8) a good swimmerの型 
    (9)人称代名詞・指示代名詞の訳し方 
    (10)名詞の反復を避けるためのthat, one, thoseなどの訳し方

    まで進みました。上記(10)を前回は(9)のなかで説明しましたが「翻訳英文法ルール表」に則り
    (10)として独立させました。
    (11)からは関係代名詞節を含んだ構文からです。

 (11)関係代名詞1…接続詞を補う 

英文法書では、関係代名詞には2つの用法―制限用法・非制限用法―があり、非制限用法はコンマの前でいったん切って、訳しおろしていくと説明していますし、親切な文法書ではその時「適切な接続詞」を加えて訳すとあります。 
(11)の訳し方は、この技法つまり「いったん切って適切な接続詞を補う」を使います。それは非制限用法の関係代名詞節だけでなく、制限用法においても適用されます。それではまず、非制限用法から、 

My aunt gave me a fountain pen, which I have lost.
⇒My aunt gave me a fountain pen, but I have lost it.
と読みほどき訳します。 

「伯母が万年筆をくれた、僕はなくしてしまった。」 

制限用法の場合
He saw a lean woman whom he had never seen before.
「彼はやせた女の人を見かけた
、今まで一度も会ったことのない人だった。」

直訳では、「彼は今まであったこともない痩せた女の人を見かけた。」ですが、読み比べてどのように感じましたか?同じ英文の訳とは思えないと感じた人もいるのではないでしょうか。  



(12)関係代名詞2…分析する 

構文が複雑になってくると(11)の「いったん切って適切な接続詞を補う」だけではうまく処理できないときがあります。その時はいったん、関係代名詞を外して文を把握しなおします。その方法としては、①分解する、②解体するがあります。 

① 分解する

I have thought of a plan by which we can seize him and put him to death.


「いったん切って」planまで訳します。その上で関係代名詞節の内容を再構成します。つまり前後関係を正しく判断するのです。後半を直訳すれば「計画によって、彼を捕まえそして殺すこともできる」ですから
「わたしはある計略を思いついた。これを使えば、あの男をつかまえて殺してしまうことができる。」 

② 解体する
関係代名詞節を含む構文の中で一番難しいタイプにチャレンジします。 

My cousin John, who was considered crazy by everybody who knows him except me, came to my house at four in the morning and woke me up by tapping in the window of my room.  

関係代名詞が2つも入って構文を複雑にしていることもありますが、この文のように語られている2つのテーマ(①ジョンは変人だ。②ジョンが朝4時に自宅に来た)が簡単には結びつかない場合、訳にまごつくものです。この際思い切って文を分解し整理しましょう。 

① 私のいとこのジョンは、知っている人みんなから変人と思われていた(exceptのまえまで)

② しかし私だけはジョンのことを変人だと思っていなかった。(except meまでの隠れた意味、つまり変人だと思っていなかった私のところに、朝4時に来たから私は驚いた、いや彼が変人でないと思っていた私の判断が間違ってい たのか…というように文が含みを持つようになります。つまりこの②の分解部分を発想することが訳す上のポイントとなります。

③ このジョンが朝の4時にわたくしの家に来て、部屋の窓をたたいて私を起こした。
「いとこのジョンを知っているものは、みんなジョンのことを変人だと思っていたが、僕だけは違っていた。そのジョンが、朝の4時にやってきて、部屋の窓をたたいて僕を起こすのである  



(13)形容詞・副詞を述語に 

この対象となる形容詞の代表は、以下のものです。 ① No, ②Many, Few, ③Much, Little, ④Some, ⑤Sometimes, Often です。No, Few, Sometimes, Oftenを例に技法を確認しましょう。 

① A man with no money can buy nothing.
「金が
無ければ何も買えない」

A man with no money この主語の部分を条件節によみかえnoは、moneyを否定するのではなく述語として使います。つまり「お金を持ってなければ」とします。 

Few people can buy such an expensive camera.
「そんな高いカメラを買える人は
ほとんどいない。」

確かにFewを「ほとんどいない」と述語として訳しています。それとともに皆さんに注目していただきたいのは、buy such an expensive camera.の部分です。英文では述部にあたるこの部分を主語のpeopleの修飾節のように訳す技術です。これによりFewを述語として訳すことができるのです。この技法をしっかりマスターしてください。 

③ He sometimes wears a blue coat.
Sometimesを見ると全く気にせずに「時々」と訳し、訳の上でこの言葉に配慮したことなどなかった方もいらっしゃるでしょう。次のoftenも同じで「しばしば」で済ましてしまいます。「翻訳英文法ルール」の沿って訳してみましょう。これもまさに「目からウロコ」になります。
「彼は青いコートを着ることもある 

④ I have often been there.
「彼は
何度もそこへ行ったことがある」
いかがですか?やっぱり「目からウロコ」でしょ!  


(14)文修飾の副詞 

ご存知の通り副詞は普通、動詞を修飾するものですが、その副詞が文全体を修飾しているときは、(13)と同じように述語的に訳します。

Apparently he was dissatisfied.

これは以下のように書き換えることができます。

It appears that he was dissatisfied. したがってApparentlyは、述語として訳せるのです。
「彼は不満そうだった」  



(15)形容詞を副詞に 

形容詞・副詞を述語的に訳すとともにこの「形容詞を副詞的に訳す」も大変役立つ技法です。とくにAll, Every, Eachの訳し方に注目しましょう。 

All the students passed their exams. 「すべての学生は試験に合格した」 → 「学生はみな試験に合格した。」 

Every man has his own opinion. 「すべての人は自分の意見を持っている 」→ 誰でもみな(それぞれに)自分の意見を持っている」 

After each game they put down the score. 「それぞれのゲームの後で、彼らはスコアを付けた」 → 「ゲームが終わるたびに、彼らはスコアを付けた」  



(16)比較級・最上級の訳し方 

これも「より~」、「最も~」と簡単に訳しあげることがほとんどだったのではないでしょうか?「翻訳英文法ルール」を活用しましょう。 

① 比較級
All over the State more people read this than any other novels.
「アメリカ中で、ほかのどんな小説よりも、より多くの人々がこれを読んでいる」
「アメリカでは、今この小説が一番よく読まれている」

内 容を把握し整理するとこの訳にたどり着きます。文法書では「比較級+than+any other」の場合は最上級として訳すと形から説明するのがほとんどですが英文の内容を把握し自然とこのような訳にたどり着くことができるようになると記 憶忘れも怖がることではなくなります。 

② 最上級
This is the finest air-conditioner money can buy.
「金で買える最もいいクーラーです」 → これ以上のクーラーはお求めになれません。」
最上級の英文を、否定を使って表現するのは高度なテックニックと言えます。  



(17)否定の絡んだ比較表現 

代表的なのが「クジラの公式」ですが、A no more B than C(AがBでないのは、CがBでないのとおなじである) と文法書は形で覚えることを薦めますが、それよりも「than の前でいったん切って」内容を把握しよい訳にたどり着く感性を磨いてください。 

We can no more change own fate than a tree can go away from where it stands.  

① than の前で切る、We can no more change own fate→「我々が自分の運命を変えることはできない。」これがわかればthan以下をどう訳せばよいかがわかります。

② a tree can go away from where it stands.→「木は自分が立っているとことから立ち去ることは
(できない)」がわかります。つまりthan の前の否定がthan 以降にもかかっているのです。

「私たちが自分の運命を変えられないのは、木が植わっているところから動けないのと同じである。」  



(18)as ~asの構文 

He is as great a man as ever lived.  

この文はas~asの基本的な訳し方、A is as B as C→「AはCと同じくらいBだ。」ではちょっと意味が通らなくなります。
「彼はかって生きていた人と同じくらい偉大だ」 → 「彼ほど偉大な人は、未だかっていない。」
as~asのいわゆる同等比較から一歩ふみ出た訳となります。つまり公式を単純にあてはめるのではなく。意味を把握して訳す習慣が必要です。  



(19)受動態1…自動詞を使って能動態に 

The door was opened.

「ドアが開かれた。」 ― 受動態を見るととにかく受身で訳す習慣がついてしまっている私たちですが、この文などは「ドアが開いた」とするのが日本語らしいと言えます。よく言われるように日本語には「被害」「受益」の受け身のみと言われているくらいです。もちろん、The door was opened.も翻訳調をそのまま生かし受け身にした方がよい場合(運命の扉が開かれた…など)がありますから、前後関係を把握して訳すのが基本です。特に若い人を中心に翻訳調の受け身そのものが市民権を得てきたということも言えますので、今後、受身のまま訳すケースが増えてくると予想されています。 

高度なテクニックと言えるのはby以下を述語として訳すものです
The success of man's life
is determined by daily efforts.

「人の人生の成功は日々の努力によって決められる」
→「人の生涯の成功は日々の努力によって決まる」
→「人の一生が成功するかどうかを決めるのは、毎日のたゆまぬ努力だ」 
 



(20)受動態2…By~を主語にして能動態に 

原文の主語と動作主(つまりby~)を入れ替えて能動で訳す。
これは学校でよくやらされた受動態を能動態に書き換えるのと基本はおなじです。

I was advised by my doctor not to go out at night.
「医者は、夜は外出しないようにと言った」 
 



(21)受動態3…暗示されたBy~を主語として 

しかし、この場合主語となるものはweとかeveryoneが多くつまり代名詞の訳し方で見たとおり「切って訳す」のが基本となります。

It is well known that New York subway is dangerous.

動作主を補うとすれば、by everyoneなどが考えられます。
「ニューヨークの地下鉄が危険だということは、誰でもがよく知っていることだ」
もちろん翻訳調もOKですね。「ニューヨークの地下鉄が危険だということはよく知られている」

A tree is known by its fruit.
動作主としてはby usなどが考えられます。省略します。
「木の良し悪しは実を見ればわかる」  



(22)受動態4…受動態のまま訳す 

①「被害」「受益」の場合
この場合は日本語においても受動態で語るのが普通です。

David was thrown out of the room.
「ディヴィッドは、部屋から放り出された」

He was elected president of the society.
「彼はその協会の会長に選ばれた」
 

②人間を主語にして訳す
日本語ならば主語は当然人間であるところを、ものを主語し受身で表現することが英語ではよくあります。人間を主語に置き換えて受身で訳す方がよい場合があります。

Mary's bag was stolen in the street.
メアリーは路上でバッグを盗まれた。」 


(23)仮定法1…主語に仮定が含まれる場合  

これも「目からうろこ」の極め付け。大変、納得のルールです。注目してください。 仮定法と言えば、ifの構文があって、本文が続くのが普通ですが、実際にはそのif構文がないのに仮定法の文があるのです。さっそく実例を見ましょう。  

An Englishman would not pronounce the word that way.
If構文を加えてみましょう。
If you were an Englishman, you would not pronounce the word that way. 例文のAn Englishmanif構文に該当します。したがって訳は「もし君が英国人ならば」となるわけです。
If構文がないから見分けにくい?大丈夫です。本文には、wouldやcouldが登場します。
逆に言うと、would, should, could, mightなどが出てきたらif構文がなくとも「仮定法かな?」と英文を見直すことをお薦めします。  

「英国人なら、その単語はそんな風には発音しない」
「なら」に仮定法のかすかな跡が残っていますね。  

例文をもう一つ
An ordinary person would not have behaved like that.
仮定法過去完了、もちろん主語に仮定が含まれています。
普通の人だったら、あんなことはしなかったはずだ」    



(24)仮定法2…副詞句に仮定法が含まれる場合  

Ten years ago he would not have done such a thing.
仮定法に気が付かなかったならば「10年前には、彼はそんなことはしなかっただろう」と訳すでしょうが、
副詞句Ten years agoに仮定法が含まれています。つまり「10年前だったら」となります。

「10年前だったら、彼はそんなことはしなかったはずだ。」
日本語とし自然になりますね。    



(25)仮定法3…発想を転換する  

(12)のルールは「関係代名詞2…分析する」でした。日本語に対応するものがない表現形式の場合は、この「分析や発想の転換が必要になります」これが、翻訳の難しいところの一つです。

If he had been in poor health, he could not have written so many books
直訳してみましょう。
「もし彼の健康がすぐれなかったら、あれほどたくさんの本は書けなかっただろう」 こんなとき日本語として仮定法の力を借りず、ストレートの発想をしますね。つまり「発想を転換する」とは「日本語らしい発想で文章を再構成する」ことです。 実際にやってみましょう。

「彼は健康だったからこそ、あれほど多くの本が書けたのだ」
確かにこの方が日本語らしい表現と言えますね。    



(26)話法1…直接話法を生かす  

(26)(27)は話法の訳し方、つまり間接話法をどう訳すかがテーマです。なぜなら直接話法はよっぽどの制約がない限り、間接話法で話すことが少ないか らです。もちろん「噂によれば」などを使い、間接話法にしてしまうケースはありますが、ここでは「間接話法」の処理方法がテーマです。  

Bob told me that he had come to Japan the previous month.
そもそも間接話法の文章は、時制など制約が多く直訳では、なかなか歯切れの良い文章とはなりません。  

①直訳しましょう。
「ボブはわたくしに前の月に日本に来たことを話した」

②直接話法の英文に置き換え訳してみましょう。
Bob said to me, " I came to Japan last month."
ボブはわたくしに「私は先月、日本に来た」と言った。

③直接話法を生かしながら訳します。
「ボブはわたくしに、先月日本にやってきたと言った」
これがやっぱり一番納まりがいいですね。つまり一番日本語らしい表現なのです。    



(27)話法2…直接話法を掘り起こす  

The object of his repeated visits to the house was vague.

① 直訳します。
「彼のその家に繰り返し訪問する目的は、あいまいだった」

② his repeated visits to the houseなどをできるだけ文章の形にほぐします。
これまでに学んだことを活用します。hisは、主語として訳し、visitsは動詞として訳す。
「彼はたびたびこの家を訪ねて来たが、その目的はあいまいだった」 よくなってきました。
最後にThe objectのところに適切な疑問詞を付加してみましょう。
「彼はたびたびこの家を訪ねてきたが、なぜ来るのか(その目的)はわからなかった」
間接話法の英文をこのくらい生き生きとした文に訳すことができるようになれば、さらに翻訳が楽しくなります。    



(28)強調構文…公式通りでなく「~こそ…である」のように訳す  

強調構文はthat以下を先に訳すのが公式ですね。それでは例文のように少し長くなると訳すときは後ろへ戻って大変ですし、強調構文らしさにも欠けます。こんなときは原文の語順を重視して訳してみると、おのずからか訳文が見えてきます。  

It is because my father has left me a great amount of legacy that I can lead such a luxurious life now.  

①まずthatの前まで訳してみましょう。
   「私の父がたくさんの遺産を残したからです。」

②That以下です。
   「私は今、このようなぜいたくな生活が送ることができる(lead(生活など)送る)。」

③①の部分が強調部分です。that以下は、強調部分の結果ということがわかります。  

「父が遺産をたくさん残してくれたからこそ、僕は今、こんな贅沢な暮らしができるのだ」    



(29)省略(共通)構文 

大学受験に登場するレベル以上の英文を見ていると、英文は「省略」の文章だと感じることがよくあります。つまり大学受験の英文解釈問題には「省略」を落とし穴にして問題文を作っているのがありますね。  

Jack can speak German and Linda French.
短い文章ですからLindaFrenchの関係はわかります。間にcan speak が省略されています。これが長文だったり、知らない単語だったりするとどこが省略されている か発見することが難しくなります。省略(共通)構文についてはまずどこに何が省 略されているかを見つけるのが先ということになります。訳し方の原則は、「日本語は 同じ言葉の繰り返しをそれほど嫌わない」ことを覚えておき、適切に活用します。  

「ジャックはドイツ語を、リンダはフランス語が話せる」    



(30)接続詞1…except, without  

① The room was dark except the small lamp on the table.

Exceptの訳と言えば、「~を除い て」しか頭に浮かばないですね。そうすれば 「テーブルの上の小さなランプを除いては、部屋は真っ暗だった」となりますね。英文では最初に部屋が暗いということを言っているのですから、上の訳文では 原文のニュアンスが損なわれていることがわかります。原文の語順に従って訳してみましょう。  

「部屋は暗かった。ただ、テーブルに小さなランプがともっているだけである」
 

② I cannot hear this song without thinking of my high school days.

Withoutの場合も「~なしで」とするよりも語順に沿って訳した方がよい訳文になることがあります。特にnot A without Bの場合はそうです。  

「この歌を聞くと、高校時代を思い出さずにはいられない」    



(31)接続詞2…till (until), before  

特に前半が否定型になっている場合、強調構文と結びついているような場合は、基本的にはまず原文に沿って訳してみましょう。そして「日本語らしい発想で文章を再構成」してみましょう。

①It was not till the beginning of March that I got back from London.  

この文も強調構文とtillが結びついたものですが「日本語らしい発想で再構成する」と  
直訳 「私がロンドンから帰ってきたのは、3月の初めまでではなかった」
いつ帰ってきたのでしょう?3月のはじめですね。  

「3月初めになって、やっと私はロンドンから戻ってきた。」  


②It was some minutes before Mr. Smith began talking.  

上のtillと同じように訳しましょう。
直訳 「スミス氏がしゃべり始める前に、少し時間があった」
日本語的発想でも原文に沿って訳した方が自然ということに気づいてください。
「少したって、ようやくスミス氏が口を開いた」    



(32)時制…現在形が職業を表す場合  

最後は「時制」についてです。現在形では職業を表す場合があること、「歴史的現在」「劇的現在」の訳し方、そして「時の一致」の処理の仕方に注意しましょう。

① 現在形が職業を表す場合

Susan has a job in a supermarket: she takes customers money.
直訳 スーザンはスーパーで働いている。彼女はお客のお金を扱っている。
「スーザンはスーパーで働いていて、レジ係をやっている」  


② 「歴史的現在」の訳し方

The messenger arrived with news of the disaster. At once preparations are made to send relief to the victim of the flood. Boxes of food and bundles of clothing are loaded on to lorries.  

ここに書かれていることはすべて過去の出来事ばかりです。それは最初のarrivedでわかります。後の2つの文では現在形を使っていますが、これは切迫した臨場感を出すための技法ですから、訳出するときはそれに心がけましょう。  

「使いの者が災害の様子を知らせてきた。直ちに、洪水の犠牲者を救う手筈が整えられ、食料を詰めた箱と衣類がトラックに積みこまれる  


③「時の一致」の処理

「時の一致」の決まりを理解していれば簡単です。元に戻せばよいのです。主節の動詞が過去の場合、従属節の動詞が現在形のときは過去形として一致させたのですから。訳すときはその決まりを解き放し、過去形を現在形に戻し訳します。  

I thought he was a good driver.
「わたしは、彼は運転が
うまい思った